第3回 読み聞かせのポイント&おもちゃの選び方
子どもの興味や関心に合わせ て自由に展開できる、余白のあるおもちゃを

親子のコミュニケーションツールとなる絵本やおもちゃ。絵本やおもちゃの選び方、使い方は子育てをする中で知りたいポイントのひとつです。今回は絵本の読み聞かせとおもちゃをテーマにお話しいただきました。

自分の読み聞かせを録画することでヒントが見つかることも

内田
「共有型しつけ」の親と「強制型しつけ」の親では、絵本の読み聞かせも違います。
大宮
上手な人は読み聞かせをしながら、子どもの顔をとてもよく見ています。子どもはページの中の何かに集中して、じっと見ることがよくありますが、そういうときには読むのを中断して、「これは何かな?」と一緒にイラストをのぞきこむ。子どもはお母さんがそうしてくれると満足して、また読み聞かせに戻っていきます。一方、強制型のお母さんは自分のペースでひたすら読み続けます。そして、最後に「わかった?」「どんなお話だった?」と聞いて、要旨を説明させたりしてしまう。絵本には隅々まで見る楽しさがあるのですが、そこを一緒に楽しもうという気持ちが強制型のお母さんは少ないですね。
内田
間の取り方も抑揚も全く違いますよね。共有型の親は子どもを見ながら語りかけるように、絵本も子どもがよく見えるような位置にして読みますが、強制型の親は子どもを見ていないので、一本調子だったり、大人に聞かせるような朗読調になってしまう。視点が子どもにあるか、それとも自分のほうにあるかで大きく違ってくるのだと思います。
上田
自分の読み聞かせを録画して、それを子どもと一緒に見てみるといいかもしれませんね。読み聞かせをしている映像を共同注視する。お母さんも子どもも、自分たち自身を見るのって、とても新鮮な経験になりますよね。特にお母さんにとっては、自分の振る舞いを観察して、次に読み聞かせをする時の参考になります。今は、携帯で映像を簡単に撮れるようになりましたので、ドキュメンテーション(記録)にチャレンジするのも楽しいですよ。
内田
家庭でも、例えば動物園に行ったときにビデオを撮って、帰宅してからもう一度見ると、「こんなことをしたね」という振り返りになりますね。楽しさを再現して共有するためだけでなく、自分自身の達成感のようなものも湧くでしょうし、「あのとき、お猿さんはこんなことをしていたんだね」というように、物事を知るという意味でも深くなります。
上田
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映像を見て気づくことがありますから、3度くらい楽しめる。自分が遊んだことをもう一度遊び直すというか……。
内田
遊び直す。いいですね。振り返るというとお勉強みたいだから、遊び直す。
上田
自分たちでやったことって、意外と面白いんですよ。見たものを素材にして、家族で話し合いもできますよね。家族の中で動物園には行かなかった人がいたら、「今日はこういうところに行ってきたのよ」という話もできるし、「じゃあ、今度遊びに行くときはこうしよう」というふうに、明日の遊びをもっと楽しくすることにもつながっていきます。

読み聞かせも子どもが中心 子どもの個性や興味に合った絵本を選びたい

内田
読み聞かせでもうひとつ大切なのが、子どもが繰り返し同じ絵本を読んでとせがむとき。繰り返しせがむのは、その絵本からまだ吸収できる栄養がある証拠なので、「昨日も読んだわよ」などと言わないで、満足がいくまで繰り返し読んであげてほしい。30日も同じ絵本を繰り返し読んだ親子がいたという記録もあるくらいです。
上田
毎日新しい発見をしているのでしょうね。共有型のお母さんだと、表現の仕方なども毎日少しずつ違うのではないでしょうか。
大宮
何度も読むうち子どもも内容を覚えてしまいますから、文字が読めなくても、お母さんと一緒に声を出して読んだりするようになります。それがお母さんと一緒に絵本を読む楽しさのひとつ。自分でお人形に「聞いてね」と言いながら本を開いてみたり、お母さんをオーディエンスにして本を読もうとしたり、そういう絵本を使った遊びが発展することもあります。
内田
やっぱり子ども中心なんですよ。保育も、子育ても、絵本の読み聞かせも。いつも子どもを見ていることが大事なのではないでしょうか。
大宮
相手をよく見て自分の中に受け入れ、相手と関わろうとする姿勢は、相手が小さい人でも大人でも同じですよね。ですから、子どもに対してできていない人は、実はパートナーに対しても、社会生活においても、できてない可能性があるのではないかと思います。
上田
例えばプレゼンテーションでも、コンピュータばかり見ている人よりも、オーディエンスを見て反応を見ながらインターラクティブに進める人のほうがわかりやすい。今日のお話はすべてに通じるコアな部分ですね。
内田
子どもが何に興味、関心を持っているかを見るのも大切です。10ヵ月くらいの赤ちゃんでも、個人差がはっきりと見られます。物の動きや因果的な成り立ちに興味を引かれるタイプの子どもと、人間関係や人の表情に敏感なタイプの子どもがいて、私たちは前者を「図鑑型」、後者を「物語型」と名づけています。好きな遊びも違っていて、図鑑型は電車のおもちゃのように動くものが好き。物語型はおままごとが好き。絵本でも、物語型の子どもは物語絵本や生活絵本が好きで、図鑑型の子どもは図鑑やいろいろな動物、車が描かれているような絵本を飽きずに見ています。遊び方や絵本の好みには個人差がありますから、子どもの個性や好みを大切にしてほしいですね。

究極のおもちゃは白無垢のキューブ 自由に変化させられるおもちゃがプレイフルを生み出す

大宮
遊び方が決まっているおもちゃよりも、子どもが遊びの幅を広げていけるおもちゃがいいですね。子どもたちは大人が思いもしない遊びを展開しますので、それができるような、ふくらみのあるおもちゃがいいと思います。
内田
究極のおもちゃは白無垢のキューブ。それに形を与え、色を与え、ファンクションを与えるのは子どもの想像力です。想像力を展開させるために、五感を使った体験、遊びをたくさんやっておくことですね。そうすると、ひとつの石が遊び道具となって、子どもの想像力で何にでも変えられる。私も子どもが遊びを作り出せるような、その子の興味や関心に合わせて展開できるおもちゃ、そして他の物と組み合わせて遊べるようなおもちゃが良いと思います。
上田
僕は、学びのための道具、ラーニングデバイスと呼んでいますが、一辺35センチの木でできた真っ白なキューブを100ぐらいつくったことがあります。35センチですから、2つ積めば机になります。3つでバーカウンターの高さになるので立って話せます。1つだけ床において周りを囲んで座るとちゃぶ台のようにもなります。キューブを椅子やテーブル、作業台として使うとアトリエのような雰囲気をつくれるんです。既成の家具だと、それを状況に応じて変えようとはしませんが、キューブだと、どう使おうかと考え、ワクワクするんですね。道具がプレイフルなスピリットを喚起するといういい例だと思います。
大宮
ボードゲームのようなものでも、子どもはその中のカードだけを取り出して遊んだりしますが、白無垢のキューブのように、開放的な広がりのあるおもちゃのほうが子どもの遊びは広がりやすいですね。
上田
おもちゃと道具(ツール)とでは少し違うかもしれませんが、僕はおもちゃや道具がコミュニケーションの質を変えていくと思っています。例えば、椅子も道具だと考えてみますと、みんなが異なった高さの椅子に座るだけで、会話や行動が大きく変わってくるのです。このように、自分たちで状況に応じて環境を整えていく、そういうことがあたりまえにできる道具や空間があるといい。自分たちがクリエイティブになるためには、状況を自分でセッティングしていくことがとても大切で、そのために道具があり、行動を喚起するオブジェクトがあるのです。こういうアーティファクツ(人工物)が私たちの振る舞いや精神を刺激していきます。遊びも同じ文脈で考えられるのじゃないでしょうか。
変化を怖がるのではなく、変化を楽しもう、自ら変化をつくっていこうという姿勢を子どもたちが遊びを通して身につけていってくれると、プレイフルな社会がやって来るのではないかと思います。

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